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【BUCK-TICK】アルバム『No.0』全曲感想(前編)

本歌取りという和歌の技法があります。

有名な歌の要素を、自分の歌に取り入れることで、作品の味わいに奥行きを与えるやり方。

これがBUCK-TICKの最新アルバム『No.0』にふんだんに取り入れられています。

シェイクスピアにピカソ、オスカー・ワイルド。華麗な舞台装置に彩られた作品世界。ご存知の方もそうでない方も、ちょっと覗いてみませんか?

わかりにくい言葉はできるだけ解説していきます。めざせ、初心者にもやさしいBUCK-TICKワールド!

それでは前半戦、参ります!

No.0 (通常盤)

アルバム『No.0』感想(前編)

さて、バンド活動30周年を経て、彼らの21枚目の最新アルバムは「No.0」。いいタイトルです。

今日はこのアルバムについて、専門性はゼロだけど、熱量だけはたっぷりで語ります。

ちなみにサウンド面は「かっこいい!」しかわかりません、ごめんなさい。

また、往々にして、主観的な連想やこじつけもありますので、こんな読み方もあるんだな〜くらいに受け取ってくださるとありがたいです。

参考までに、公式の視聴トレーラーはこちら。

零式13型「愛」

オープニングを飾る1曲目。誰もが今井さん作詞と思った記号的タイトルはなんと櫻井さん発信。

HELLO, 天使ノ声ガ聞コエル
HELLO, オマエハダレダ
神経系接続 羊水波打チ寄セル
目覚メヨ

カタカナ表記は、この世に生を受ける前、細胞レベルの物体としての意識を感じさせます。

このSFチックな表現も今井さんぽいけど、…櫻井さんなんだよなあ。

つまり誕生前の胎内を歌っているのですが、これは誕生にしてREBORN。

輪廻 廻ル 廻ル

とあるように、生まれ直しの歌でもあります。

これはアルバム全曲を聴き終わった後に、リピートして聞くことで実感できるのですが、私にとってそのときに印象が変わるのがこの言葉。

コバルト色 空 涙ガ零レル

アルバムの特に後半にかけて、戦争の影が重くのしかかってくるのですが、その後にこの言葉を聞くと、「コバルト色」がどうにも不吉に聞こえます。

連想するのはコバルト爆弾。

現存しないと言われていますが、爆発と同時に四散するコバルトから出る放射線で、生命を死滅させるという恐ろしい核爆弾です。

そもそも、タイトルの「零式13型」というのも、戦闘機の型番がモチーフ。

その不穏な響きをもって、アルバムは幕を開けます。

美醜LOVE

美が切れ味を増して
おまえを愛してるぜ

そのまんま熨斗つけて櫻井敦司に返したいです、ハイ。切れ味増してる櫻井敦詞。

「愛している」はアルバム中で繰り返し使われていますが、この曲においてはセクシャルな意味を強く感じます。

愛と性は切り離せないものですが、それは生を謳歌する命のきらめき。

「赤裸ララ」で「咲き乱れ」る命のまぶしさ。

美しいものがあり、醜いものがある。どちらが欠けても成り立たない世の中。

そもそもタイトルの「美醜LOVE」。

かつて英会話を習ったこともあるというあっちゃんが、ここにきて「美醜LOVE」という破壊力ハンパない造語にたどりついたという事実もいとおしい。

下手に英語知ってたらきっとこんな言葉作れなません。私は櫻井敦司の日本語LOVEです。

GUSTAVE

ノイジーなバンドサウンドから一転、打ち込みサウンドに変わり、今井さんはご機嫌にフッフー!

かつて、『天使のリボルバー』の「モンタージュ」を聞いたとき、BUCK-TICKがついにイェイイェイ言い出した!と戦慄したものですが、ここにきてキャッキャ言い出すとは…。さすが櫻井敦司…もっとちょうだい。

タイトルのキュスターヴは、ヒグチユウコさんの絵本に出てくる、頭は猫、手は蛇、足はタコという人智を超えたなキャラクター。

ギュスターヴくん (MOEのえほん)

猫好きのあっちゃんにファンが死ぬほど画集を送ってくれたそうです。それを見事に作品化するのがあっちゃんのファンサ。

しかも仮タイトルにあえて「ギュスターヴ」と名付けて渡す今井さんと、それを受けてキャッキャ言い出す櫻井さんの関係性にもクラクラします。きっと言葉は交わしてない。

何万回でも生きる
化けて出るわ

このあたりは佐野洋子さんの名作絵本「10万回生きた猫」も思い出させます。

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

愛って美味しいんだね
もっと頂戴
ミャオ!GUSTAVE

恋に欲に、好奇心旺盛で貪欲なさまは、まさに動物的で純粋です。

櫻井さんの細かすぎて伝わらない猫愛が炸裂してると大評判なため、とにかくライブが楽しみな1曲。

とりあえず最後に繰り返す、「More GUSTAVE」の櫻井さんの低音が美声すぎて妊娠しそうです。

Moon さよならを教えて

泣いてたのかしら
もう涙は枯れたのに

歌い出しの、しっとりした女性らしさに吸い込まれます。

そう、櫻井敦司は演者なのです。

曲のキャラクターを声に出して表現する、その的確さに私はいつもほれぼれします。

さっきまで、サカリのついたメス猫よろしくキャッキャ言ってしっぽおったててたのに、この「Moon さよならを教えて」では、いきなり淑女を思わせる上品で艶のある声。

美しい月のごとき清廉さです。

ありがとう言わなくちゃ
流れては消える
さよならを教えて

BUCK-TICKと月のモチーフはとても親和性が高く、これまでにも何度も扱われてきました。

Under the moonlight って言葉も、何度聞いたかわからないくらいなんですが、それでもまだ新しさを感じさせてくれます。

この最後の今井さんコーラスも、やさしさに満ちていて実にいいです。

薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-

ここから星野三部作の始まり、舞台はヨーロッパへ。

幕開けは薔薇色エンブレムでハレルヤウーイェー。

「Cream soda」に代表されるような吹っ切れた星野曲が出るたび、あのクールでやさしさ自然体なヒデさんのどこにこんな狂気がひそんでいるのかと思います。

さて、薔薇十字団(ローゼンクロイツ)は、中世からヨーロッパに存在すると言われる秘密結社。不老不死、錬金術、魔術など、あやしげな言葉とともに語られる伝説的な存在です。

薔薇 薔薇 薔薇 薔薇 薔薇
咲き乱れよ
薔薇

バラバラ死体も、薔薇薔薇死体と書けばファビュラスでマーベラスになるかも?

余談ですがうちの次男がこの曲を気に入っていて、やたら「だん!だん!」と口ずさんでいます。

サロメ -femme fatale-

きましたデカダン真骨頂。

サロメと言えば、オスカー・ワイルドの戯曲です。

サロメ (岩波文庫)

サロメ (岩波文庫)

預言者ヨカナーンに愛を拒まれ、「7つのヴェール」のダンスを踊る褒美としてヨカナーンの首を要求したサロメ。銀の皿に載ったその首に口づけるサロメの狂気と愛。

ビアズリーの挿し絵が有名です。


「お前にくちづけしたよ」

そもそも femme fatale(ファム・ファタール)とは、男性にとっての「運命の女」。または男を破滅させる魔性の女という意味です。その代表格がサロメ。

この詞は退廃美の渋滞。私の大好物です。

狂わせてやる 酔わせてやる
おまえに口づけよう

過剰で強烈な愛の言葉。

ねえ femme fatale
そう サファイアの瞳
噎せる麝香(じゃこう)
バビロンの薔薇だよ

お前の唇 地獄のように熱い

サファイアといえば、『One Life, One Death 』の「サファイア」。櫻井さんにとっては「美女=サファイアの瞳」なのかもしれません。

麝香はジャコウジカから得られる香料で、古来より重要な香水の素材でした。ムスク、と言われればわかる人も多いかも。

さらにバビロンの薔薇なんて見たことも聞いたこともないけれど、さぞ芳醇で人を酔わせる香りを放っているのでしょう。バビロンは衰退した巨大都市の象徴、豪奢な幻。

ちなみにバビロン、旧約聖書ではバベルと表記を同じくするので、「BABEL」にも通じる要素です。

しかもこの女の唇は「地獄のように熱い」んですから、魔性の女にたぶらかされて、嬉しいやら苦しいやらってとこですね。

こちら、とにかく退廃美にうっとりと酔いしれたい曲です。




以上、ここで一旦区切りをつけて後編に続きます!

星野三部作の途中で失礼!

ではまた〜!